仕事から帰りマンション敷地内に入ると、10mほど先の駐輪場に座り込んでいるNが見えた。「あー。来てるんだ」。Nに確認することもなく、わたしはハハが来ていることを確信した。急いで近付く。するとわたしに気付いたNが少し興奮気味に「ね、子ネコ、子ネコ、すげーかわいい。一人はわたしの手から直接餌食べてくれた。もひとりはビビリで近付いてくれない、ほらほらほら」とまくし立てた。いつもは冷静なNが大はしゃぎしてしまうのも仕方ない。なぜなら、Nとわたしは、数日間ずっとこの親子を探し求めていたのだから。おまけに、親子揃って現われてくれたのだ。これで、ハハが再び『母』になっているという事実もはっきりしたのだし。
子ネコは二人。二人、模様がよく似ている。だが、性格はまるで逆。Nが言った通り、一人は非常に活発で好奇心の塊で臆せずどんどん寄ってくるが、もう一人はビビリまくって、いろんなことに興味津津なのだが全てにおいて一歩前に踏み出せないでいる感じが伝わる。かわいい。かわいい。こどもたちの後方にいるハハは、わたしたちに向かってずっと威嚇音を発している。なんて素晴らしい母親っぷり。しばし見とれていた。そして思い立って、部屋からネコご飯を少し持ってきた。予想外に、子ネコたちがよく食べる食べる!こちらの思惑としては、ハハにたくさん食べてもらい滋養にしてもらいと考えていたのだが。
そこを一人のマンションの住人が通り掛かった。その方はねこたちを見て、ほとんど感激に近い声をあげた。「あらー!あなたたち、元気だったのね!よかった!よかった!」と大いに喜び始めたのだ。よくよくその方から話を聞くと、6月に入ってから、一階にあるその方、Yさんの部屋の庭に、ハハが姿を現すようになっていたらしい。かわいらしいこどもたちを3人引き連れて。…はて。3人。…そう。もう1人いたのだ。ある日を境に、2人しか来なくなり、おまけにYさんのお宅で飼っているねこが、ハハたちを脅かしてしまったらしく、以来全員姿をくらましてしまい、Yさんはひどく心配していたそうだ。再会できて嬉しそうにしているYさんを見ていたら、こちらまで幸せな気持ちになった。
集合住宅の敷地内で、家なきねこたちにご飯をあげるという行為は、たとえそれが善意であったとしても、様々に問題を引き起こしてしまう可能性をはらんでいる。なので、マンション内にYさんのような方がいるという事実を知ることができたのは、ハハたちにご飯をあげながらわたしたちに慣れてもらう…という、捕獲のための最初の第一歩を歩みだそうとしているわたしたちへの勇気付けとなり、飛び上がりたいほどうれしことになったのだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿